9月中旬に起きた「上海給食問題」の経緯と現状。
弊社noteで何度か記事を投稿してきたのですが、上海の公立小学校・中学校にて、9月中旬に「給食問題」が世間から注目を集めました。
事の経緯を、再度おさらいとして以下にまとめます。
・9月15日、給食の「エビ入り卵炒め」から異臭がすると複数の学校から報告があった。
・これを受け、給食提供元である上海緑捷実業発展有限公司(以下、緑捷)が、「エビに細かい砂が混じっていた」と釈明の上で、「食品安全管理を強化し、深く反省する」とコメントした。
・この騒ぎをきっかけに、上海の保護者の間から、「上海の給食は以前からひどく、一向に改善されない」などといった声が大きくなり、ネット上には「料理の質が悪い」、「揚げ物が多すぎる」、「衛生面が不安」など溜まっていた不満が一気に噴出した。
・その後、上海市公安局・市場監督管理局・教育委員会の査察により、エビの原料は食品安全基準に適合していたものの、緑捷の経営者(報道では、張某某氏など)が食品安全に関する情報を隠蔽しようとしたとして拘束された。
・一方で、緑捷は9月23日に一連の騒動に対する謝罪声明を出したが、これが僅か48字と短いものだったことに加え、具体的な改善策に触れないもので、「誠意が見えない」として、上海の保護者のみならず、一般の消費者をも逆上させ、騒動は収まるどころか、いっそう世間の注目を集める事態にまで発展した。
・そんな中、上海の地元著名企業である光明食品集団(以下、光明)が、給食の供給を引き継ぐらしいという噂が9月末に流れ、10月第1週の大型連休(国慶節)明けには、上海浦東地区の公立学校に子供を通わせる保護者などが、ネット上に「上海の給食メニューが改善された!」と給食の画像と一緒に報告を上げ始めている。
国慶節後、給食の変化は?
上記経緯の通り、元々の提供会社だった緑捷から光明へ給食提供会社が変更されたようなのですが、では実際の給食にはどのような変化が見られるのでしょうか?
以下は、国慶節明けにある上海の保護者がネット上にアップロードした給食の画像ですが、二種類のメニュー(上海では、好みに合わせて二種類から選択可能)とともに、光明グループの『优倍(UBEST)』ブランドのチーズスティック製品が提供されているのが見て取れます。
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これを以て、多くの保護者が、上海の給食提供会社が光明に変更されたと、喜びの声を挙げています。
また、noteにも書いた通り、筆者の子供は上海の公立校に通っているため、今回の一連の騒動については当事者として関心が高く、給食の改善状況を毎日聞いています。
筆者の子供の学校では、上記の光明グループのチーズスティックが提供されたことはまだないようなのですが、給食自体は「最近おいしくなった」と教えてくれました。
本当に光明が提供を開始したのか?
ただし実は、光明からは未だに「上海の給食提供を請け負った」という公式発表はありません。
ネット上では、光明グループのチーズスティック提供以外に、「光明のスタッフが学校を出入りしていた」「業界関係者によると、光明が給食案件を受注した」「光明はグループ内に病院など向けに配膳サービスを提供する会社がある」など状況証拠的な話は散見されますが、実は同社が本当に上海の給食を担当しているのか、また担当しているとしても規模はどの程度なのか?などは不確かな状況です。
現状としては、500校以上の需要を、段階的に光明が受け持つよう供給体制を整えていっているのでは?と推測されます。(中国のネット上でも、そのような推測が多く見られます)。
【最近の上海給食の別画像例】


給食問題の救世主として期待される光明ブランド。
筆者の保護者としての正直な気持ちとしては、食品安全面や衛生面で問題なく、それなりに美味しい給食が提供されるのであれば、提供元の会社はどこでも構いません。
ネット上の保護者たちの声としても、「提供会社は光明に限らなくても、複数社の健全な競争による給食提供が理想的だ」という意見も見られます。
しかしながら、多くの上海市民にとっては、光明グループは地元に根ざした大企業で、親しみが深く、そのブランドへ抱く信頼感は非常に高いようです。
実は、筆者の上海の家でも、光明の牛乳ビンが毎朝届くよう注文し、日々の食卓に欠かせない商品です。
また、近所には光明の小売店があるのですが、乳製品以外にも、卵やフルーツ、餅、季節によっては上海蟹など、様々な商品を購入しています。
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また面白い仕組みとして、このような小売店経由の注文では、店頭で販売されている乳製品、飲料以外の商品を同じマンションに住む住民でまとめ買いすることでより安く、新鮮な商品を購入できるという近隣住民向けの地元密着型の仕組みもあります。
上記看板に見られる「社区团购(社区団購)」という表示は、直訳すると「住宅コミュニティ共同購入」となります。
このような地元住民向けの購入サービスを光明系列の小売店舗が展開していることからは、上海市民にとって光明というブランドが身近な親しみのある存在であることが窺えます。
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光明グループは元々乳製品が有名で、グループ内の「光明乳业股份有限公司」が乳製品の生産と販売を主力事業とし、年商は約243億元(2024年)に達する上海を代表する企業です。
また、光明グループ内には、米・パン・麺類などの主食類や、野菜・肉・卵など食料品の供給体制を持つ別企業もあります。
この「光明グループ」としての供給力もさることながら、上海市民にとって『光明ブランド』への親しみと信頼感はかなり高いものがあるようで、給食提供への期待感は日々高まりつつあるようです。
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🔹弊社note記事
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【中国コラムご紹介】48字の謝罪声明。短すぎて伝説に?(上海給食問題)。
【中国コラムご紹介】上海給食問題に光明?(の噂)。
🔸中国語コラム
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